
兵庫県姫路市にある姫路獨協大学。
2011年の春、ここに創立20周年を記念したホールが完成しました。充実した視聴覚設備を備えるだけでなく、地域社会との連携が考えられたホールとなっています。今回のESCの仕事はこちらのホールとそれに連なる18室の講義室の、映像音響設備です。

ホールに入ってまず一番に目を引くのは、正面上方に埋め込まれている200インチワイドのガラススクリーンです。シンボリックなホールにふさわしい存在感を放っています。舞台上には表面がホワイトボード仕上げになっている2枚の化粧扉があり、それを開くと85インチのプラズマディスプレイが現れる仕組みとなっています。
ホワイトボードには電子ペンシステムが導入されており、ホワイトボードに書いた内容がそのまま、ガラススクリーンに拡大投映されます。書いた内容はPCに保存出来るので、授業後の配布資料やe−ラーニング教材作成にも活用出来ます。
電子ペンシステム導入のボトルネックとして、「卓上の液晶ペンタブレットだと小さくて書き辛い」や「今までどおりのインクペンで書きたい」「学生とアイコンタクトを取りながら立って講義を行いたい」といった意見を耳にするが、これなら講義スタイルを変えることなく拡大投映&板書のデータ化が可能です。
設置されたHDカメラを利用すると、プラズマディスプレイに映った資料映像やホワイトボードの板書、講演者の表情といった舞台全体をガラススクリーンに拡大投映することが出来る。電子ペンを利用しない場合でも、後方に座る人へ配慮したシステムとなっています。
また、HDカメラの映像は別の中講義室2部屋へライブ配信可能となっています。これにより、新入生ガイダンスや就職セミナー、オープンキャンパスといったホール収容人数を超える運用の際も対応出来る為、マルチな運用が期待されます。



マルチ映像システムの他にスポットを当てたい点として操作卓があります。注目して欲しいのは一番右のブロックです。天板上にモニタがあり、中にはHD対応モデルの講義収録装置が収納されています。実はこれ、分離して持運び可能なのです。ワゴンごとキャスターで転がしていけば、別の講義室でもカメラやPCを接続して手軽に講義収録が行えます。もちろん、講義室のみならず屋外のフィールドワーク時に運用することだって不可能ではないでしょう。

実際の運用事例をお伺いしたところ、現在入門演習ではちょっとユニークな運用がされているということです。
前方の席は車椅子の利用を想定し取り外せます。その機能を利用し、座席レイアウトを変更することで前方で討論会を行い、それを後方の座席から見るといった模擬議場としての運用が行われています。HDカメラを利用した拡大投映だけでなく、講義収録装置を利用した、フィードバック学習を行うことも容易です。
スピーカはラインアレイスピーカを左右2本ずつ、計4本が導入されています。この規模のホール音響設備では、音の減衰が少なく、反響を抑えることができるラインアレイスピーカが近年主流となりつつあります。全ての音を前方から発信することで、舞台上に立つ講演者に、聴衆の注意を引き付けることが出来る点でも有効なシステムです。


ホール以外に計18室、講義室へAV設備導入を行っています。規模の差はあるが、講義室の操作システムは全てESCのAVシステムスイッチャーによる操作に統一しています。これにより、どの教室で講義を行っても迷うことなく、AVシステムの利用が可能です。
このホール、壁面の大半が明るい独特の風味のある木材で造られている。これらは全て兵庫県の間伐材なのです。
今回の計画では地域貢献が一つのキーワードになっており、間伐材の利用もその一つです。
一般的に、間伐材はコストが高く、使い辛いとされています。そうした側面から利用は敬遠されがちであるが、その悪循環が更なる価格高騰と、森林環境の悪化を招いてるのが実情です。
そこで近年は地域振興事業の一環として、間伐材を利用した事業では補助金を適応されることも多くなってます。今回の姫路獨協大学でも、そうした補助金を活かし、より地域と結びついたホールの完成に一役買っています。このホールによって、姫路獨協大学周辺の森林の美しさも保たれるのであれば、これもまた一つの環境保全、エコと言えるでしょう。また、通路スペースの確保や、板書の拡大投映といった、幅広い利用者を想定した設備内容も、講演会や公開講座で地域の方が利用しやすい環境となり、地域貢献の1つになりました。
今後の展望として、遠隔講義システムを導入し、姫路駅前サテライト教室との連携といったお話もお伺いしています。やがては姫路獨協大学と姫路市、そして海外の諸団体とが森林保全についての国際サミットをこのホールで行うことになるのではないだろうかと、勝手ながら楽しみにしています。
