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Inter BEE 2018(第54回 国際放送機器展)

  • レポート/コラム

2018年11月14日~16日の3日間、Inter BEEこと国際放送機器展が幕張メッセで盛大に開催されました。放送局やスタジオ、大型イベント施設向けとしたハイエンド、プロフェッショナル向けの製品を中心に最新の映像音響機器が一同に集まります。会場は、国際展示場Hall 1~8の展示会場、イベントホールでのスピーカー体験デモ、国際会議場でのセッションと大規模に構成されています。それでは、当社ソリューションと関係の深そうな展示を中心にレポートをしていきます。

国際展示場ホール内風景、今年は2054ものブースが出展した
直線で500m以上もあるとても広い会場です

SRTプロトコル搭載4K対応H.265コーデック(エクスプローラ)

国内初SRTプロトコル搭載の4K対応H.265エンコーダ/デコーダ(EHU-3410E/EHU-3410D)を展示していたエクスプローラ社(Explorer)。「SRT」とは、カナダHaivision社によって2013年に開発されたオープンソースのビデオ伝送技術で、現在150以上の企業がアライアンスを結んでいるそうです。この技術はインターネットでの配信を前提として、パケットロスなどが発生する不安定なネットワーク環境においても、ノイズを抑えた高品質の画質を再現できるというもの。ブースでは疑似的にパケットロスを発生させた状態で、SRT対応と非対応の配信映像を比較展示していて説得力がありました。

Explorer SRT搭載コーデックシステム
パケットロス時の映像比較 右がSRT対応、左の非対応映像にはノイズが発生している ※参考:Haivision社 Webサイト https://www.haivision.com/about/partners/srt-alliance/

Flip-Dotディスプレイによる空間演出(シンク・デザイン)

シンク・デザイン社(Think DESIGN)が一風変わった空間演出「Flip-Design」を出展していました。Flip-Dotと呼ばれるディスプレイは、オセロのように表裏が白黒の2色になっている小さな羽がいくつにも連なり、磁気の作用でその1枚1枚がパタパタと瞬時(15f/s)に反転することで文字や画像を表示します。デジタルでもありアナログでもあり、不思議な魅力があります。このディスプレイは、長方形のユニットを組み合わせることで最大20m×10mまで大型化できるそうです。

シンクデザイン社 Flip-Design
この白黒の小さな羽がパタパタと動きます

4K対応デジタルポイントメーカー(アイディケイ)

マルチスイッチャやビデオコンバータ等でお馴染みのアイディケイ社(IDK)のブースでは、AV over IP製品群「IP-NINJAR」を中心に様々な4K対応の新製品などを展示。AV over IP(映像音声のIP伝送)の技術は、拡張性のある自由度の高いシステムを構築することができ、また、ここ数年で他メーカーからも同類の製品がリリースされており、業界全体としてこれから利用する機会が増えてくることが予想されます。その他、参考出展されていた4K対応のデジタルポイントメーカー「VP S1」も気になる存在です。入力ソースとしてHDMI、USBカメラに加え、Airplay、Miracastといったワイヤレスで送信した映像を利用でき、その映像の上にペンタブレットで加筆を行うことができます。加筆情報が上書きされた映像は、HDMIでの出力の他、最大29端末のタブレットへリアルタイムに配信することもできるそうです。アノテーター(加筆器)も進化していますね。

IDK AV over IPシステム
デジタルポイントメーカー VP S1 中央の黒いユニットが本体です

体験型3D音響システム(アバクス)

アバクス社(Abacus)は、「Sonic User Interface」と呼ばれる体験型のおもしろい音響ソリューションを出展していました。SONYのSonic Surf VRと呼ばれる波面合成音響技術をベースに立体的な音響再現に加え“音”を“物体”として操ることができるインターフェースとしての音響を体験できます。デモでは、ハンドコントローラーで音の位置を動かすことができました。例えば、耳元にコントローラーを近づけると音も耳元で鳴っているように聞こえ、コントローラーを体から遠ざけると遠くの方から聞こえるような感覚です。同様にコントローラーを右に動かせば右へ、左に動かせば左へ、物体のように音を動かすことができます。今回は、センサーとして手に持つタイプを使用していましたが、他のタイプのセンサーも組み合わせ開発することができるそうです。新しい音響体験のツールとして今後の展開が楽しみです。

Sonic User Interfaceの体験ブース
手元のコントローラーの動きに合わせ音が立体的に聞こえてくる

4画面マルチビューアー(ローランド)

電子楽器など音響機器のイメージが強いローランド社(Roland)ですが、業務用機材としては映像機器まで幅広く展開しています。ブースでは、マルチフォーマット対応のHDMI 4入力×2出力のマトリクススイッチャー(XS-42H) やHDIMI 4入力×2分配出力のマルチビューアー(VP-42H)が展示されていました。いずれも10月にリリースされたばかりの新製品で小型な本体サイズ、ステレオ音声の入力出力とオーディオ・ミキサーの搭載、Webブラウザでのリモート機能などが特徴です。マルチビューアー(VP-42H)では、入力した4つの映像をプリセットした様々なパターンで分割表示をすることができますが、Webブラウザからのリモート操作で、リアルタイムに自由なサイズと位置に画面を動かすことができます。実際にタブレットで操作してみましたが、スムーズに動作していました。4K対応ではありませんが、小柄でシンプルな本体に秘めたパフォーマンスの高さを感じました。

Roland VP-42H のデモ 手前のタブレットで直感的に画面レイアウトを操作できました
小柄な本体に機能が詰まっています

Dante対応 遠隔会議用プロセッサー(ボーズ)

スピーカーでお馴染みのボーズ社(BOSE)は、オーディオシグナルプロセッサー ControlSpaceシリーズを中心に会議室、講堂、レストラン、ライブ、ポータブルPAの5つのゾーンに分け空間ごとのアプリケーションを紹介していました。中でも注目したのが、会議室ゾーンに展示されていた遠隔会議用プロセッサー「ControlSpace EX-1280C」。USB、VoIP、PSTN(電話回線)の入出力に対応し、12ch分のアコースティック・エコーキャンセラー(AEC)を搭載しています。Danteにも対応している為、例えば会議テーブルにある複数の会議マイクをDanteエンドポイントで一つにまとめてCAT5/6ケーブルで伝送するなどスマートなシステム構築が可能になっています。

BOSE社ブース 機材を羅列するのではなくシーンごとにシステムを展示
音声会議のシステム例 ControlSpace EX-1280CとDanteエンドポイントを提案

高音質デジタルワイヤレスシステム(オーディオテクニカ)

オーディオテクニカ社(audio-technica)は、新製品のデジタルワイヤレスマイクや会議マイクシステムを中心に展示していました。今年10月に発売された800MHz帯デジタルワイヤレスシステム(3000 Digitalシリーズ)は、新開発したオリジナルコーデックを搭載し高音質で最大10波(ノーマルモード)、更に音質の伝送レートを下げることで最大15波(HDモード)まで同一空間で利用可能です。2chレシーバーは、Dante出力搭載(ATW-DR3120DANHH1) と非搭載(ATW-DR3120HH1)のラインナップがあります。レシーバーだけでなくマイク充電器にもネットワークに対応したモデル(ATW-CHG3N/A)があり、LAN経由で充電状態を確認することができます。遠隔地から教室や会議室の設備の状態を確認できる為、管理者の負担軽減に貢献してくれそうです。

audio-technica デジタルワイヤレスマイクの展示
充電器 ATW-CHG3N/A ネットワーク対応の為、本体にEthernetの接続口がある

DSP内蔵ミキサー/Danteコンバーター(ティアック)

ティアック社(TEAC)のプロフェッショナル音響機器ブランド「TASCAM」。8マイク/ライン入力、8ライン出力DSP内蔵のマトリクスミキサー(MX-8A)を2019年1月に、DSPミキサー内蔵の各種Danteコンバーター(Danteコンパクトプロセッサーシリーズ)を2019年2月に発売予定しており、展示会場でお披露目されていました。これらの製品は、本体ではなく専用のコントロールソフトウェアで設定、調整を行いますが、ソフトウェアはWindowsだけでなくAndroid、iOSにも対応していてタブレットからも操作ができます。今まであまりTASCAMでは見ることが少なかったDSP系の製品が出揃い、ティアック社の意気込みが感じられました。

TASCAM MX-8A、手前にあるiPadで マトリクスミキサーのフルコントロールを行うことができる
DSPミキサー内臓のDanteコンバーター ADタイプのMM-4D/INとDAタイプのML-4D/OUT (コネクタ形状で末尾に-Xまたは-Eが付く)

ハドルルームソリューション Web会議ツール(エレクトリ)

エレクトリ社(ELECTORI)のブースでは、AVコントローラやタッチパネル、AV over IPデバイスなどで馴染みのあるAMXブランドの製品を展示。その中で、ハドルルームソリューション「Acendo Vibe(アセンドバイブ)」が出展されていました。Acendo Vibeは、JBLプロデュースによるによる高音質スピーカー、マイクとDSPアルゴリズムによるAEC機能に加え、広視野角のカメラを搭載しています。持込みPCとUSBで接続して快適なWeb会議を行うことができます。また、Bluetoothでスマートフォンを接続して電話会議のように利用することも可能です。ハドルルームの重要性は世界的に注目されている為、Acendo Vibeのようなシンプル&スマートなミーティングツールが今後も市場的に増えてくるのではないでしょうか。

AMX ハドルルームソリューション 「Acendo Vibe」の他、コラボレーションツールとして 「Acendo Core」のユニットも展示されていました
AMX Acendo Vibe サウンドバーの中心にWebカメラが搭載されいる 付属のBluetoothリモコンもスマート

未来型コラボレーションソリューション(メディアプラス)

メディアプラス社(MEDIA PLUS)のブースでは、Oblong Industries社が提供する「Mezzanine(メザニン)」を全面的に展示。Mezzanineでは、ディスプレイ上に複数のコンテンツ(映像信号や資料データ)を同時に表示し、WAND(ワンド)と呼ばれるハンドリモコンでそれらのコンテンツの表示サイズや位置を直感的に操作することができます。ディスプレイの映像は、Mezzanineを導入している他の拠点でも同じように表示され双方に共有できます。一言でいうならば“ダイナミックコラボレーションソリューション”という呼び方になるようです。
MITのメディアラボにおける研究「Luminous Room」から生まれたMezzanine。「Luminous Room」のコンセプトは2002年に公開されたマイノリティ・リポートの中で、空間上の映像を手のジェスチャーで操るシーンに反映されているそうです。
Mezzanineは、システムの規模に応じていくつかのシリーズがあり、一番小さな200シリーズで2面、拡張性のある650シリーズで最大6面分のマルチディスプレイに対応した構成になっています。Mezzanine単体同士での接続は、同時4拠点までとなっていますが、Webブラウザを通してPCやタブレットからも共有することができる為、様々なスタイルのミーティングに対応できそうです。

Mezzanine 600シリーズのデモ 左側3面がプライマリディスプレイ 右側3面がコルクボードと呼ぶセカンダリディスプレイ
600シリーズのダイアグラム オレンジ色の部分が標準的なパッケージ範囲 他の部分は部屋の仕様に合わせて機材を組み合わせます
WAND(ワンド)、ディスプレイに向けるとポインタが現れ 四角いボタンを押すと狙った画面をつかむことができる 赤外線もしくは超音波でセンシングを行う
コルクボード上の画面を実際に操作 WANDを手前に引くと画面が大きく、奥にやると小さくなる 未来感のあるプレゼンルームを体験できました

おわりに

今回開催されたInter BEE 2018は、過去最多となる出展者数(1,152社・団体)、来場者数(40,839名)を記録したそうです。東京2020大会を目前に4K/8K、HDR、IP伝送など実際にリリースされている製品が出揃い盛り上がりを見せていたように感じました。次回のInter BEE 2019もここ幕張で、2019年11月13~15日に開催予定です。

SONYブース 大画面のCrystal LEDディスプレイに見入る来場者
Panasonicブース 一堂に集まるリモートカメラ
各社のヘッドホンやマイクを視聴できる 体験ゾーンもありました
イベントホールでは第5回目となる SRスピーカー体験デモも開催されていました
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