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Inter BEE 2025にみる、「映す・聞く・共有する」会議環境の現在地

  • レポート/コラム

2025年11月19日(水)~21日(金)の3日間、幕張メッセで国内最大級の音と映像・通信の総合展示会「Inter BEE 2025(国際放送機器展)」が開催されました。生成AIやIP化、クラウド活用の流れが一段と進む中、今年はイマーシブ演出やAV-over-IPといったキーワードが存在感を増し、放送・イベントだけでなく、企業の情報発信や空間づくりにも影響する技術の広がりが印象的でした。本レポートでは、ESCの事業領域とも関わりの深いWeb会議・ハイブリッドコミュニケーションに焦点を当て、現場で得た気づきや注目ポイントをわかりやすく整理してお伝えします。

YAMAHA:ADECIA(遠隔会議/AV-over-IP)

ヤマハは、Web会議用途に特化した音響シリーズ「ADECIA V3.0」を展示していました。同システムは、シーリングマイクやテーブルトップマイク、ワイヤレスマイクなど、会議用途で使用される音響機器をシリーズとして展開しており、V3.0では各デバイス間の連携性がさらに高められています。また、AI議事録ツール 「Scribe Assist」 と連携により、会議中の発言内容がリアルタイムで文字情報として記録・共有されることで、「誰が・何を話したか」を後から確認・活用しやすい形で整理できる点も印象的でした。ヤマハ株式会社が開発・提唱する、ユーザーの位置や状況に応じて情報をスマートフォンへ自動配信する技術コンセプト「SoundUD™」にも対応しています。例えば、会議室内の音声や案内情報を、聞こえにくさを感じている人のスマートフォンに文字情報として補完的に届けるといった使い方が可能で、誰もが同じ情報にアクセスしやすい環境づくりを目指すという考え方です。声の情報を「必要な人に、必要な形で届ける」という発想が、会議音響の領域にも応用され始めていることが分かりました。音声の聞き取りやすさや空間表現を含め、遠隔でも参加しやすいコミュニケーション環境を目指している点が印象的でした。

AI議事録ツール「Scribe Assist」と連携も可能。
大阪・関西万博2025でも導入されていた「SoundUD™」

Barco:ClickShare 新モデル

   ハイブリット会議を強化するモジュラー型ビデオ会議室システム「ClickShare Hub Pro」

Barcoの「ClickShare」は、これまでプレゼン用途のCシリーズと、ハイブリッド会議対応のCXシリーズを展開し、PCを起点にワイヤレス共有できる点が特長でした。新たに登場した「ClickShare Hubシリーズ(Core、Pro)」は、従来の周辺機器的な位置づけから進化し、Microsoft Teams Rooms(MTR)を内蔵した会議室常設型ソリューションとして設計されています。ClickShare本体と専用コントロールパネルのみでTeams会議を開始でき、外部MTR端末は不要です。さらに、ClickShareの強みであるBYOM (Bring Your Own Meeting)は継承されており、ZoomやGoogle Meetを利用する際は、ボタンをPCに接続するだけで、会議室のAV機器をワイヤレスで制御できます。常設型とBYOMを1台で両立できる点が、従来モデルとの大きな違いです。既存のTeams Rooms環境を拡張する用途ではCX-50 Gen2が有効ですが、新規構築ではHubシリーズにより、シンプルで柔軟な会議室設計が可能になります。

Insta360:Insta360 Connect

Insta360のブースでは、 「Insta360 Connect(2025年発売)」 という、PTZカメラとビームマイクを搭載したビデオサウンドバーが注目されていました。本体には14個の全指向性マイクアレイが内蔵されており、最大約10m離れた声まで収音が可能。これにより、中規模会議室でも天井マイクのようなカバー範囲を実現し、会議室において高品質な音声環境を提供します。さらに、広角カメラと望遠ジンバルカメラを搭載したデュアル4Kカメラ構成で、グループ全体ビューと個人のクローズアップを同時に扱える仕様となっています。従来の専用機器なしで、プロレベルの会議体験を提供できる点が魅力の製品でした。(画像提供:Insta360

ギャラリーモードで全員を見やすく表示する。
発言者を自動でフォーカスするスピーカートラッキング機能。

MEDIA PLUS :ThinkHub(ハイブリッドコラボレーション)

MEDIA PLUSのブースで特に注目されていたのが、協働型デジタルホワイトボード「ThinkHub」です。BYODを前提とした現代の会議環境にフィットした設計で、どの端末を使っていてもスムーズに参加できるよう、デバイス間の制約をできるだけ取り除いている点が特徴です。複数の資料を1つのキャンバス上に展開し、並べて比較したり、アイデアを直感的に整理したりといった作業がスムーズに行えるのも、魅力的でした。拡大・縮小やドラッグといった操作性は軽快で、画像やPDF・Webページなど異なる形式のコンテンツもシームレスに扱うことが可能です。こうした特性は、実際に電気通信大学の事例(https://www.eizo-system.co.jp/case/uec/)でも、議論の可視化や思考整理を支援するツールとして活用されており、教育・研究の現場でも活躍しています。ブレインストーミングや企画会議の「情報が散らからない」「議論が進むような環境づくり」をサポートしてくれます。ハイブリッド会議を前提に、遠隔地のメンバーと同一画面を共有できる点も特徴です。拠点分散が進む現在のワークスタイルを踏まえたコラボレーションツールとして、活用の幅を感じさせる展示内容でした。

まとめ

Inter BEE 2025は、映像・音響機器の展示会にとどまらず、Web会議やリモートコミュニケーションのあり方が次の段階へ進んでいることを実感できる場でした。各ブースで展示していた最新のソリューションからは、ハイブリッドワークがより快適で自然になる未来像が見えてきます。IPネットワークやAIを活用した会議環境は、オフィスや会議室のあり方がますます変化していき「どこにいても参加できる」「誰でも使いやすい」という価値を前提に、さらに進化していくと感じました。次回のInter BEE 2026は2026年11月18日〜20日、幕張メッセにて開催予定です。

Inter BEE公式サイト

https://www.inter-bee.com/

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