これから求められる医学教育とその環境づくり
東邦大学医学部では、早くから知識のみならず、情報を収集する診察手技や病態に対応した処置を行う技術修得の重要性を認識し、2009年4月にはシミュレーション教育にかかわるセクションを独立させたシミュレーションラボを設立しました。医学部2号館においては、 2016年より3ヵ年計画で(仮称)AI Met Lab(Active and Intelligent Medical Training Laboratory)の整備を進め、2018年8月に、生涯教育の場としてシミュレーションラボをリニューアル、様々な研修、実習の為の設備充実が図られました。
OSCEと収録
新しくなったシミュレーションラボは、セルフトレーニングスペース(STS)、模擬診察室×6室、映像管理室(モニター・サーバー室)で構成されています。今回、映像システムは、模擬診察室を中心にOSCE(以下、Post-CC OSCEを含む)向けの収録関連設備を導入しました。
OSCEは、筆記試験とは異なり、リアルタイムにその場で評価を行う実技形式の為、事後に改めて再評価を行うことが困難です。評価の客観性を担保する為にも、試験の状況を映像音声として記録し残すことが必要でした。
運用をサポートする設備構成
各模擬診察室には実技試験の収録用に天井カメラ、ビデオカメラ、天井マイクが常設されています。各カメラ映像と音声は、ネットワークを通じて収録システム用のサーバーに記録(あらかじめスケジュールを設定することで自動的に収録)されます。記録されたmp4形式の動画は、Webブラウザ上の管理画面で確認することができる他、外部ストレージへコピーして持ち帰ることができます。
映像管理室には、各室の天井カメラを一括してモニタリングすることができる46型のIPモニターが設置されており、マウス操作で各天井カメラの旋回、ズーム、プリセット呼出などのリモート操作ができます。また、映像管理室から卓上形マイク・アンプを経由して各室や廊下で待機中の人に音声で指示ができるようになっています。
ポイントはこだわりと工夫
「今までの実習では、タスクトレーニング、すなわち手技だけを学ぶことが中心でしたが、これからは実際の医療現場で起きるであろうことを体験的に学ぶ、シミュレーション教育が重要になってきます。海外にはシミュレーション教育専用の施設として、ビル丸々一棟を建てている大学もありますが、私たちには、そこまでの広いスペースはありません。今回のシミュレーションラボのリニューアルにおいては、ここで何をしたいのかという観点を大切にし、必要な機能にはこだわり、様々な工夫をしました」 医学教育センター 廣井室長
診察室にも病床にも設定が可能な模擬診察室は、一部屋あたり23㎡程度の広さで、試験を行う場合は問題ありませんが、多人数で実習等を行うには厳しいことが予想できました。その為、部屋の壁の一部をパーティションにすることで、隣接する部屋と併合利用できるように設計しています。また、各部屋には、マジックミラー状の大きい窓があり、バックスペースから室内のモニタリングを可能にしています。収録映像を隣接するセミナー室へ配信することもでき、授業の幅を広げています。高解像度で細部まで確認できるカメラ映像、室内のこもりがちな音声をクリアに捉えるマイク集音、収録データの運用・管理のし易さなど、弊社で導入した設備についても高い評価を頂いています。
2020年から全国でPost-CC OSCEが実施されます。医学教育も進化を続け、これから更に医療系大学におけるシミュレーション教育とその環境整備に注目が集まりそうです。
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